キミに嘘を吐く日
「俺、大学は向こうに戻って受けようと思ってる」

「え?」

「昨日、父親から連絡があったんだ。元々住んでいた家の近くのマンションを2部屋父親が買ったんだと。そのうちの一部屋を俺にくれるんだってさ」

「お父さんが、宇野くんにマンションを買ってくれたの?」

「弁護士してる手前、子供を捨ててそのままってのは、体裁が悪いと思ったんだろ。成人するまでの間の学費は出してくれるらしい。生活費はバイトでもして自分で稼げって言われてる。本当は俺を捨てた親なんかに頼りたくはないけど、子供の俺にできることなんて限られてる。親としての義務を果たすっていうなら、それは受けていずれ自立してやろうと思ってる」

「なんだか、すごい話だね……」

「金だけは腐るほどあるんだろうよ」


自分を捨てた親だと罵りつつも、将来のことを冷静に考えている宇野くんはすごいと思う。

未来への展望を語る彼が、なんだかとても眩しく見えた。


「き、昨日はさ、いろはにみっともないところを見せたよな。でも、いろはが俺の中に溜まってた、黒くて重くて苦しいもの、全部吐き出させてくれて……すっげ、スッキリしたんだ。カッコ悪いけど、あれでなんか吹っ切れた。いろはが俺が欲しかった言葉くれて、俺は1人じゃないんだって思えた。だから、父親から連絡があった時も冷静に話せた」


私の言葉が宇野くんの心を軽くすることができたってこと?

宇野くんの役に立てたってことなのかな?


「よか……った。私は宇野くんにもらってばっかりだったから、何も返せていなかったから、私にできることなんて、何もないと思っていたから……だから、私が少しでも役に立てたなら嬉しい」




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