キミに嘘を吐く日
宇野くんが選んでくれる本が、私の好みにあったものだということは、彼は私がどういう本が好きかを分かっているということ。

それは、彼自身が私を知ろうとしてくれた結果だ。

そのことに気付いた時、自分が急に恥ずかしく思えた。

私は今まで、誰かのことを知ろうと考えたことがあっただろうか?

私は、私自身が過ごしやすい環境に閉じこもって、誰かのために何かをするということをしてこなかった。

損得までは深く考えてこなかったけど、それでも相手を知ろうと努力することすら考えなかった。

宇野くんが私の好みを知ろうとしてくれて、私の為にこうして本を探してくれる。

それは私を、とても温かくて優しい気持ちにさせてくれる行為だった。

どうして宇野くんはこんな風にただのクラスメイトの為に、自分の貴重な時間を使ってくれるのだろう?


「……御門、聞いてる?」

「えっ?」


考え事をしていたから、宇野くんの顔を見ていたのに、彼の話を聞いてなかった。

そんな私を、仕方ないなぁと苦笑しつつ、もう一度話してくれる。


「図書ボランティアをしてみないかって。茶原(さはら)さんが」


茶原さんというのは、宇野くんのことを教えてくれた市立図書館の職員の女性だ。

あの日からすっかり仲良くなって、私達が図書館を訪れると声をかけてくれる。

オススメの本を教えてくれることもあった。
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