キミに嘘を吐く日
春休み中ということもあって、水族館はすごい人出だった。

イルカやアシカのショーが普段よりも多くプログラムされている。


「まずはぐるっと回って見るか」


既に人の波に飲まれそうで、私は宇野くんとはぐれないように彼の後を必死についていった。


「わわっ、」

「いろは?」


大学生位の団体に押されてよろけた私を、宇野くんは咄嗟に腕を掴んで引き寄せてくれた。

胸の中にすっぽりと包み込まれて、今までにない至近距離に焦ってしまう。


「ごめん、ごめんねっ」


咄嗟に両手を彼の胸についてはなれようとしたけれど、人に押されて思うように動けない。


「いいから。人の波が落ち着くまで、ジッとしてなって」


逆に背中に腕を回して来て耳元で囁かれてしまって、全身が沸騰しそう。

早く、早く人の波が引けばいい。


「可愛い〜高校生のカップルだよ?意外と大胆だね今頃の高校生って」


そんな声が聞こえてきて、どうしようもなく恥ずかしくて…だけどどうすることもできなかった。

カップルだなんて言われて、きっと宇野くんは困ってる。迷惑だって思ってるよ。

どうしよう?この後雰囲気悪くなったりしたら…。

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