妖怪師匠と優雅な時間
「……って誰かに言われて
心がときめいたら
それは恋なんだと思いますよ」

師匠はわたしから離れると
縁側に出て行った

心臓がまだドキドキしている
師匠に見つめられて
本気じゃない言葉をかけられたのに

この気持ちは一体なんだろう

師匠は、師匠、だし

悶々としていると師匠に呼ばれた

「稲荷さーん
一緒に餌やりしましょう」

わたしには恋愛はよくわからないけど
今は師匠と一緒に居れたらそれでいいか

「はい、今持っていきますね」

今はこの、素肌が畳を滑り
美味しいお茶を誰かと飲み
師匠とたわいもない会話をできれば
それでいいかもしれない

わたしの知らないところで
師匠のつぶやきが鯉に反射した

「僕は実に大人気ない」
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