妖怪師匠と優雅な時間
「…彼女を護る者が近くにいれば
お前など術さえも使えぬわ」

「それはさしずめお前のことだろう?
いやあ、健気なやつよ
命でも助けてもらったのか?
どうしてあの小娘に執着する?
お前が殺してしまえば
我々妖怪を倒す力もみなぎるであろう
なぜ殺さない?」

「恩義に背くことになる
理由などお前に言う必要ない」

「おお怖い怖い、そんなに睨むなよ
…わかった、我は賢く気高き化け猫だ
実際お前の言う通り
小娘に我の術が効かなかった
危ない道を踏んでは元も子もない
…どうせ小娘がくたばるまでもうすぐさ
じっくりゆっくり待たせてもらうよ」

猫は影を小さくして
踊るように庭を出て行った

「師匠〜!どこですか〜!
レポート終わりましたよー!!」

九十九邸に心地よい声がこだましている

「…もう少しだけこのままでいさせてくれ」

九十九秋成は声のする方へ歩き出した

夏が始まろうとしていた
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