ホワイトデーの約束
あの日
今年のバレンタインは今までの人生の中で最高のものだった。

あの日、勢いで告げた“好き”の言葉は緊張で上擦ってしまった。
それでも先輩にはちゃんと伝わったようで、抱き寄せられて「俺も橘が好きだ」と耳元で囁かれた時は、胸がいっぱいで苦しくなった。

そのあと彼が連れて行ってくれたフレンチレストランで思い切って、いつ私を好きになってくれたのか尋ねたみた。


「初めて会った時から、もう惹かれてたよ。だから、お前以外からのチョコは受け取る気になれなかった」


少し決まりが悪そうに答えた彼に赤面し、握っていたスプーンを落としてしまったことは、まだ記憶に新しい。


別れ際、私を初めて「香奈」と呼んだ彼はとても優しいキスをくれた。

嬉しさと恥ずかしさが心の中を埋め尽くして、その日はなかなか眠れなかった。
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