ホワイトデーの約束
「言っておくがな、俺だって、寂しくなかったわけじゃないんだぞ」
「ひゃっ」


うなじのあたりからリップ音をたてた先輩が顔を上げる。
ガラリと、彼の纏う雰囲気が変わった。それはとても艶やかなものへと。

これは、この空気は、えっと・・・


「あ、シャワーを、先にっ」
「後だ」


フワリと体が浮いて、思わず彼の首に腕を回す。
迷いなく歩みを進める彼が向かうのは、もちろん寝室。
考えてなかったわけじゃないけど、こんな、急に。ちょっと待って。


「あの、あの―」
「悪いが、今日は我慢しない」


ゆっくりと私をベットに降ろした彼にそのまま唇を押し当てられる。
早急に割入ってきた舌が私を翻弄して、手が足のラインを沿うように滑る。


「んっ」


どんどん深くなっていく口づけに、思考が溶け出していく。

だけど、どうしても今、彼に伝えたいことがある。
その胸を小さく叩くと、離れた口から吐息が漏れた。


「はぁっ・・・ま、ことさん」


呼吸が乱れて苦しい。
でも、ちゃんと言いたい。


「私、真人さんが、好きです。大好きなんです」


彼は目を丸くして私を見た後、柔らかく微笑んで一番欲しい言葉をくれる。


「あぁ、俺も。愛してる」


再度、落とされるキスと一緒に目尻からも幸せの涙が落ちた。

真人さん、臆病な私は貴方の前でまた言葉を飲み込んでしまうかもしれない。
だけどね、これだけは約束するよ。


来年も、再来年も、これから先もずっと、"貴方が好きです"と伝え続けます。
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