情熱的に愛して
「市川の事は……何とも思ってないよ。」

目の前が、暗くなる。

「本当なの?」

「本当だよ。ただの同期。」

息をするのも、やっとだ。


「だったら私達、やり直せないかな。」

「千沙子さん……」

胸がズキッとした。


”付き合っている訳じゃないんだから、名前で呼ぶのは、止めて下さい。”


そう言っていたのに。

寄りを戻すなんて、うんって言わないよね。

私は急いで、オフィスに戻った。


「どうだった?」

秋香は、私が席を外した理由を、何となく知っていたみたい。

「忙しいみたいで、声掛けられなかった。」

「そう。」

私は募集の紙を、そっと横に置いた。


ねえ、門馬。
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