情熱的に愛して
雪人は、私を見てニコッと笑った。

私も何だか、微笑んでしまって、雪人の前に座ってしまった。


「ねえ、雪人。今、何考えている?」

「えっ?」

雪人の顔が歪む。

それは嫌だよね。

自分の思っている事を、そのまま言えなんて。


「私ね。清水係長の言葉、なんだか思い出してしまって……」

「千沙子の?」

私は、うんと頷いた。

「清水係長、別れる時にね。雪人は冷静だったって言ってたの。」

ちらっと雪人を見たけれど、彼は黙ってうつ向いていた。

「もう少し、情熱的に愛してくれればって……」

「情熱的に……」

「今そう言われたって、二人の仲は変わらないと思うけどね。」

私はそう言って、立ち上がった。
< 225 / 234 >

この作品をシェア

pagetop