雨女と机



金曜日、今日は登校している時、少し寒かった。


机をのぞくとやっぱり雨は止んでいない。


そして、凛は、


(さくらさん、素敵な名前ですね。)


と猫に話かけていた。


だけど、驚いた。


そのふきだしの下にもうひとつふきだし。


いつもと同じ癖のある文字で、


(もうすぐテストですね、お互いがんばりましょう。机の中をのぞいてみてください。)


わたしは自分の机の中を手探った。


すると、いつも置いて帰る本の他に細長い箱が入っていた。


静かに開けてみると黄色いシャーペンが入っていた。


文具屋で見たことある、少し値のいいものだった。


そして何気なく箱の蓋を見てみると、裏にいつもの文字で、


(自分から咲良さんへのプレゼントです。咲良さんのテストがうまくいくよう、願っています。)


「……」


何だか変な感じがした。


顔もフルネームもどこの誰かも知らない、ただわかることはこの学校の関係者だ、という人からの贈り物。


毎日わたしの席に来て返事を書いてくれる人。

やっぱり、少し、不気味だった。


でも、正直自分を今までにない形で構ってくれる人。


この贈り物に結構喜んでいるわたしがいる。


正直心惹かれてないことないのは……


わたしはその黄色いシャーペンでいつものように、


(ありがとうございます。大切に使わせていただきます。)


と、猫はうさぎにお礼を言った。
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