雨女と机
昼休みから静かに雨が降り出した。
リュックの中に折りたたみ傘入れてきたかな、と少し不安になりつつ、窓の外を見た。
放課後。
金曜日だけあって、早く帰る人もいればテスト前ということで学校に残って勉強する人もいる。
わたしはどちらかというと前者でいたかったが、運悪く委員会の当番がまわってきてしまった。
図書室のカウンターでぽつりひとり。
本当はわたしの他にもうひとり当番がいるはずなのだが、忘れているのだろうか。
向こうに見える机には、何人かの生徒がいた。
テスト勉強に精を出しているように見える。
じゃあわたしも勉強しようかな。
バッグから数学の問題集を取り出して、手前にあった筆箱から例の黄色いシャーペンを出した。
静寂、雨音。
何分、何時間が経っただろうか。
入り口近くのカウンターの前を数人が行き来していくのを目で追いながら壁に掛かっている時計を見た。
あと15分程で図書室を閉めなくては。
そう思いながらチェバの定理の解説に目を戻す。
『下校時刻になりました。校内に残っている生徒は帰宅してください』
さっきまで雨音だけが大きく聞こえていた図書室は、話し声や椅子をしまう音で突然にぎやかになる。
そして数分後、また雨音だけの図書室に戻った。
わたしは窓が全部閉まっていることを確認して、自分の荷物を持って廊下に出る。
図書室のドアの鍵を閉めるのに少し苦戦しながら、ふいに今日が金曜日だということを思い出す。
あ、金曜日なら英語の辞書、持って帰らなきゃ。
職員室に図書室の鍵を返しつつ、自分の教室へ足を運んだ。
廊下に響く、雨音と足音。
教室に向かう途中、思い出す。
凛さん、もう返事くれたかな。
そう思って、少しドキドキしながら教室のドアに手を掛けた。