拝啓、何億光年先の雨より
少し気味が悪いと思った俺は、その日記を
近くの棚に戻そうとした。
が、
「そこの残ってる人!もう閉めますよ!」
突然、背後から聞こえた声に驚いた俺は
持っていた日記を落としてしまった。
…きっと図書委員だろう。
少し怒っているような口調だ。
「それ、貸してる本ですか?
だったら早く持って帰ってくれます?」
顔が見えないが、相当苛ついているみたいだ。
少し焦った俺は、落ちた日記を咄嗟に
自分のカバンにしまい込んだ。
踵を返して、図書室を出る。
___廊下は、夕日のオレンジ色で染まっていた。
図書室の近くに、人の気配はない。
…ったく、何だよあの図書委員。
あんなに怒る必要ねーだろ。
そう思いながら俺は、カバンの中に閉まった
スマホを取り出す。
「…あ、やっべ。この日記…」
スマホを取り出す時に触れた本。
俺が咄嗟にしまい込んだ、あの日記だった。
…正直言って、気味が悪い。
けど、図書室はもう閉まっている。
しょうがねぇ、明日コッソリ返しておくか。
「…今何時だ?」
ふと思って、さっき取り出したスマホを見る。
「………ん?」
ロック画面に写っているのは、
《 ×€時z〆=分 》
「……ついに壊れたか」
1人、溜め息をつく。
元々このスマホも使って割と経っている。
そろそろ壊れてもおかしくない時期だ。