拝啓、何億光年先の雨より
…まぁだいたい夕方だから
5時ぐらいと言ったところかな。
壊れたスマホをポッケにしまって、
昇降口を目指す。
_______2年の5月下旬。
この学校に入学してから1年が経っていた。
暖かかった温度は、やがて暑さに変わり
もうすぐ梅雨がやって来る。
今でも少し、じんわりと汗をかいていた。
手で顔を扇ぎながら、階段を降りる。
昇降口は一階だ。
早く帰って、晩飯を食べよう。
昇降口に着いた俺は《朝比奈 陽》と書かれた
下駄箱を開けて靴を履き替える。
よし、出よう。
そう思って、玄関扉を開こうと
取っ手に手をかけた。
「………ん?」
いつもは簡単に開くはずの扉が
全く開かない。
「嘘だろ、鍵かかってんのか?」
何度押しても扉は頑なに閉ざされたまま。
たしかここの扉の鍵は職員室で
預かっていたような…。
仕方ない、職員室まで戻るか…。