エリート上司の甘く危険な独占欲
「本当に?」

 颯真が心配そうな顔で華菜を見た。眉間にわずかにしわが寄っていて、目も細められている。

(さっきの必死な顔といい、一之瀬部長ってこんな表情もするんだ)

 余裕のある大人の男性だ、という彼のイメージがほんの少し崩れた。

「本当です」

 彼は華奈の目をじいっと覗き込んだ。華奈がしっかりとうなずいたのを見て、華奈の体に回していた腕を解く。

「そうか、なんだ。驚いた。でも、よかった」

 颯真の表情がホッとしたように緩み、本気で心配してくれていたのだとわかった。

「部長はどうしてここに?」

 颯真は左手で前髪をくしゃりとかき上げた。

「キミがバーを出てから、心配になって俺も出たんだ。帰ったのかな、と思って駅に向かったけど、電車はまだ来てないのにホームにキミの姿がなくて。それで慌てて辺りを探していたら、海に人影が見えたから」
「それで海に入ってくださったんですか?」
「ああ。階段に靴が揃えて脱いであったから、これはマズイ、と思ってね」

 華菜は颯真の足元を見た。スーツのズボンのまま海水に浸かっていて、華菜を抱きしめたせいで上着も少し濡れている。

「申し訳ありません」
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