エリート上司の甘く危険な独占欲
 華奈は慌てて体を離そうとした。颯真が華奈の両の二の腕を掴んで支える。

「大丈夫か?」
「あ、はい……」
「これで間違いない?」

 颯真は左手で華奈を支えたまま、右手の小箱を見せた。ベルベットが濡れていて、あんなにも輝いて見えた箱が、今はまさにゴミのようにみすぼらしく見える。

「はい。ありがとうございました」

 箱が見つかったことに安堵して、華奈はホッと胸を撫で下ろした。だが、その手が濡れた生地に触れて、一気に血の気が失せる。

「あ……」

 必死で探したせいか、右手の袖はいつのまにかずり落ちて海水を吸い、じっとりと肌に張りついていた。おまけに裾からも滴がボタボタと落ちている。颯真はと言えば、華奈を助けようと飛び込んできてくれたときのままだから、スーツのズボンが膝の上辺りまで濡れていた。

「あー……はは、どうしましょうね?」

 華奈は情けない気持ちでつぶやいた。濡れた服では電車にも、タクシーにだって乗れない。自分だけではなく、上司にまで迷惑をかけてしまった。

「提案なんだけど……」

 颯真が口を開き、華奈はゆっくりと彼を見た。
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