エリート上司の甘く危険な独占欲
「ぶ、部長は優しいんですね」

 華奈はすん、と鼻を鳴らした。まぶたにそっとキスが落とされる。

「名前で呼べって」
「あ、ごめんなさい」
「昨日の夜みたいに呼んでよ」

 颯真が華奈の額にコツンと額を当てた。昨日、彼の腕の中で乱れながら何度も名前を呼んだことを思い出し、顔が熱くなる。

「颯真さん」

 照れながらささやくと、颯真が目元を緩めた。

「華奈のその声で呼ばれると、ぞくぞくするな」

 颯真が片方の口角を引き上げて笑った。部長のその表情もぞくぞくします、と言おうとしたが、それより早く彼のキスで唇を塞がれた。



 そうしてベッドの中で濃密な時間をたっぷり過ごしてから、華奈は彼に男物のダンガリーシャツを着せられた。そうしてダイニングとキッチンを隔てるカウンターの前のスツールにちょこんと座らせられる。

 颯真はTシャツにチノパンという格好で、キッチンで卵を割り始めた。その手際のよさに感心しているうちに、彼はバターを溶かしたフライパンに、溶いた卵を流し入れた。ジュワッと小気味いい音がして、バターの濃厚な香りが漂ってくる。

 颯真は菜箸で卵を軽くかき混ぜ、茹でたほうれん草とベーコンをのせると、フライパンを揺すって形を整えた。
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