エリート上司の甘く危険な独占欲
 茹でダコのように赤くなった華奈の顔を見て、颯真はクスリと笑った。

「話はこのぐらいにして、どうぞ召し上がれ」

 華奈はコホンと咳払いをした。

「あ、りがとうございます。いただきます」

 手を合わせてから、フォークとナイフを手に取った。オムレツにナイフを入れると、卵がふわっと崩れ、温かな湯気が上る。口に入れるとバターの風味が生きたオムレツが、ほろりとほぐれた。

「おいしい……」

 華奈はほうっと息を吐いた。

「口に合ってよかったよ」

 颯真が言って、ソーセージをかじった。

 彼がブランチを作ってくれると言ったときは驚いたが、料理をする様子から慣れているのだろうな、とわかった。

(そういえば柊一郎さんは一度も手料理を作ってくれたこと、なかったな……)

 華奈が料理を作って片付けをしていても、手伝うそぶりすら見せなかった。別れ際に言われた彼の言葉からも、柊一郎は意外と古風な考え方の人間だったようだ。

「こら」

 頬を軽くつままれて、華奈は我に返った。颯真が不満そうな表情で華奈の目を覗き込んでいる。

「俺と一緒にいるのに、ほかのことを考えていただろ?」

 独占欲のにじんだ言葉にドギマギして、華奈は頬を赤くした。
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