エリート上司の甘く危険な独占欲
(つ、付き合ってるわけじゃないのに、部長ってばこんなセリフをすらすら言えちゃうんだ)

 そう考えてハッとする。

 カクテルを奢られて、海で助けられて、シャワーを浴びる順番でもめて、あげく一緒に浴びることになった。これを流されたと言わずして、なにを流されたと言うんだろう。

(ああ、もう完全にダメなパターンだ……。部長には『共通項が多い』って言われちゃったし、部長は私のこと、『来る者拒まず、去る者追わず』だと思ってたりして……)

 とはいえ、昨日、彼を拒まなかったのは事実だ。

(昨日の失恋で、箍(たが)が外れちゃったのかなぁ……。もう自分がわからないよ)

 華奈はため息とともに、上司手作りのブランチを飲み込んだ。



 作ってもらったので、食後の片付けは華奈が「やります」と申し出た。洗剤を泡立てたスポンジで食器を洗っていると、颯真がカウンターに肘をついて頬を支えながら微笑む。

「魅惑的な光景だな」
「へっ」

 颯真の声に驚いて、華奈の口から変な声が飛び出した。
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