エリート上司の甘く危険な独占欲
「その反応も新鮮だ」

 颯真はスツールから立ち上がって、華奈の隣に立った。華奈は皿やコーヒーカップを水で流して食器カゴに入れた。華奈は颯真がそれを布巾で拭くのかと思ったのに、彼は華奈を後ろからふわりと抱きしめる。

「ひゃあっ」

 彼の大きな手のひらが太ももに触れて、華奈は思わず声を上げた。颯真は笑みを含んだ声でささやく。

「俺のシャツを着てキッチンに立つなんて、誘ってるとしか思えないんだけど」
「いえっ、そんな、まさか! 服は部長が貸してくれただけで、片付けは完全なる厚意ですっ」

 華奈は慌てて左手を彼の胸に当て、彼を押しやろうとした。

「冗談だよ」

 颯真はクスッと笑って体を離し、華奈はホッと肩の力を抜いた。華奈は思いっきり動揺したのに、彼の方はまったく余裕の表情だ。

「お腹が落ち着いたら、車で家まで送っていくよ。ワンピースはまだ濡れていて着られないし、俺のスウェットのズボンを貸そう」
「お願いします」

 華奈はできるだけ平静を装って動揺を隠し、ぺこりと頭を下げた。


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