エリート上司の甘く危険な独占欲

　昨日の懸案だったキャンセルの件は無事に片が付き、華奈は余計なことを考えまいと目の前の作業に集中した。気づけばランチタイムになっていて、隣の席から麻衣に明るく声をかけられる。

「華奈さーん、ランチに行きましょう！」

　麻衣は朝と違ってすっかり元気を取り戻していた。華奈と颯真のことをなにも疑っていない、そんな純粋な彼女を見ていると、華奈は自分に対する嫌悪感から吐き気を覚えた。

「ごめんね、麻衣ちゃん。私、今日は……友達と会う約束があって」
「そうだったんですか！　じゃ、いつも通りほかの女の子たちと食べに行きますね」

　麻衣は隣の女子社員と連れだって、オフィスを出ていった。華奈は大きなため息をつく。友達と会う、と言った手前、一人でランチを食べているところを麻衣たちに見られるわけにはいかない。トイレにこもって泣きたい気分ではあったが、午後から腫れた目で仕事をするわけにもいかない。

（ここ最近の恋愛運の悪さは、いったいなんの報いなんだろう）

　華奈はのろのろとデスクを片付け、できるだけゆっくりとエレベーターホールに向かった。