あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
叔父の顔は、悲しみも怒りも笑みもない無表情だった。ただ目の前にいる私たちに向かって語っている。
「これだけでは終わらんぞ。
父は泳介に関心を寄せず、私だけ期待を背負わせた。
母は父に心理的に捨てられた泳介を哀れと思ったのか、泳介に対し特別優しく接した。
父はそんな奴を庇うなと言い、いつしか二人は離婚。
父の期待だけを無理に背負わされ、大人になった私は父の会社を継いだ。
そして父は早くも亡くなった。にも関わらず奴らは葬式は愚か、連絡ひとつなかった。
それに、泳介が亡くなり子供二人の面倒を見るには自分の年金だけでは足りないと、何かあった時は頼むと、私に頼ってきた。
私は奴らとは違う。
だから何も言わず金を渡した。
だから今日ここへ来た。
お前たちの面倒を見る気はさらさらない。
ただ住む場所だけは与えよう。世間の目があるからな」
あまりにも淡々と述べる叔父に私たちは言葉を失った。
叔父は、相当祖母と父を恨んでいるのだろう。
そんなやり取りがあったなんて知らなかった。
だから働いていない祖母のもとに安定してお金があったんだ。
初めて知った事実に私は驚きを隠せなかった。
そして、いかに叔父が世間の目を気にしているかもわかった。
「…光希歩といったな。
お前、高校に通ってないそうじゃないか。東京に来たらすぐに試験を受けさせるからな。勉強しておきなさい」
私は聞き逃さなかった。
最後、何と言った?
高校に通えと?
…嫌だ。怖い。怖いよ。
叔父さん、もしかして私の脚のこと、知らないの?
それに、本当に東京に行くの?
海光は転校ってこと?
掴んだ海光の腕をギュッと握った。
海光はまだ、力強く叔父さんを睨んでいる。