あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。


正月も過ぎ去った世の中は、もうすっかり本格的な冬を迎えており、寒さに震え上がる人で溢れていた。

それでも翔琉は毎日会いに来た。
手袋。マフラー。コート。と、だんだん厚くなりながらも。
さすがに正月は来なかったが、毎日話すにつれ、私も少しだけ楽しんでいる自分に気が付いた。


翔琉は三人家族で一人っ子。
近くの名門高校に通う二年生。
ほぼ毎日塾に通っている。

私も同い年だよ。と伝えると、また嬉しそうに「ほんま!?どこの学校!?」と聞いてきた。

だから私は「さあ」と答える。
そうすると、翔琉は少し残念そうに眉が下がるから。

…小動物みたい。

翔琉のそんなわかりやすい性格のおかげで、彼にだけは言いたいことが言えるんだ。

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