あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
翔琉side.
二〇一九年 三月十一日 月曜日。
一応、プレゼントを買ったものの、光希歩が本当に欲しいモノはわからぬまま、今日を迎えてしまった。
光希歩が誕生日を教えてくれた時の、あの辛そうな顔はどうしても忘れられない。
そりゃあ、震災があった日が自分の誕生日だなんて辛い。って思う人もいるかもしれない。
いや、違う。
あの日だけじゃないんだ。
毎日、光希歩と話してきた。
少しずつ、笑顔も見れてきた。
でも、光希歩は心から笑っているようには見えない。
いつもどこか寂しい表情をする。
辛い気持ちを隠している。
少なくとも、俺にはそう思えた。
学校の授業中、そんなことを考えている俺の耳に、なんとも不快な音楽が窓の外から聞こえてきた。
時刻は午後二時四十六分。
ああ、そうか。
俺は、何の気なしに授業を続けている人達を放置し、机に向かって頭を下げ、目を閉じた。