あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。
***
「うぎゃあああああ───……」
「ごめん光希歩!ちょっと今、手が離せないの」
「わかった!」
二〇一〇年も終わりに近づいていた。
私は大泣きしている海光の元へ駆け寄って抱き上げた。
そしていつものように歌い出す。
「────かわいいかわいい私の海光ちゃん…」
「…夢をみて」
「…大丈夫よ」
「…お姉ちゃんはここにいるからね」
『ママ』と『赤ちゃん』のところを『お姉ちゃん』と『海光ちゃん』に変え、私はすっかり姉らしく頑張っていた。
海光は大概この歌を歌えば泣き止む。
この歌には不思議な力があるのだろう。
なんせ、お母さんが願いを込めて作った歌なのだから。
そんな時、ピンポンと軽快な音が鳴り響いた。
「多分宅配便だと思うから出て!」
私は海光を抱えたまま、玄関へと走った。
はい、と言って扉を開ける。
冷たい風が勢いよく滑り込んできた。
「あらぁ、光希歩ぢゃん。それど海光ぢゃんも」
そこに立っていたのは宅配の人ではなく、隣の家に住む、パーマがかったおばさんだった。
「こんにちは」
「こんにぢは。光希歩ぢゃん、お手伝い偉ぇねぇ。いづも綺麗な歌が聞ごえでぐるよ」
照れ隠しに海光に視線を落とす。
「うふふ。こいづ、回覧板だがら、渡しでおいでね」
そう言ってひとつのバインダーを渡され、おばさんは帰っていった。
「うぎゃあああああ───……」
「ごめん光希歩!ちょっと今、手が離せないの」
「わかった!」
二〇一〇年も終わりに近づいていた。
私は大泣きしている海光の元へ駆け寄って抱き上げた。
そしていつものように歌い出す。
「────かわいいかわいい私の海光ちゃん…」
「…夢をみて」
「…大丈夫よ」
「…お姉ちゃんはここにいるからね」
『ママ』と『赤ちゃん』のところを『お姉ちゃん』と『海光ちゃん』に変え、私はすっかり姉らしく頑張っていた。
海光は大概この歌を歌えば泣き止む。
この歌には不思議な力があるのだろう。
なんせ、お母さんが願いを込めて作った歌なのだから。
そんな時、ピンポンと軽快な音が鳴り響いた。
「多分宅配便だと思うから出て!」
私は海光を抱えたまま、玄関へと走った。
はい、と言って扉を開ける。
冷たい風が勢いよく滑り込んできた。
「あらぁ、光希歩ぢゃん。それど海光ぢゃんも」
そこに立っていたのは宅配の人ではなく、隣の家に住む、パーマがかったおばさんだった。
「こんにちは」
「こんにぢは。光希歩ぢゃん、お手伝い偉ぇねぇ。いづも綺麗な歌が聞ごえでぐるよ」
照れ隠しに海光に視線を落とす。
「うふふ。こいづ、回覧板だがら、渡しでおいでね」
そう言ってひとつのバインダーを渡され、おばさんは帰っていった。