あの日の帰り道、きっとずっと覚えてる。

私がゆっくりと戸を閉めようとした時。

「ねんね!ねんね!」

外から可愛らしい声が聞こえた。

「あ、海美ちゃん!カクのお母さん!」

「こんにぢは、光希歩ぢゃん。丁度買い物さ行くべで思ってだの」

カクがいないことに少しガッカリしたが、海美ちゃんに会えたことには喜びを感じた。

生まれた日が数日しか変わらないのに、まだ喃語しか話せない海光に比べ、海美ちゃんはもう私のことをお姉ちゃんとして『ねんね』と呼んでくれる。

妹が二人いるような気がして嬉しかった。

「ああ、光希歩ぢゃん。今度の光希歩ぢゃんの誕生日会、楽しみにしてでね」

「うん!ありがとう!」

私は回覧板を片手に、もうすっかり眠りにつき、ズレてきた海光の体勢を戻して、中に入った。

まだ三ヶ月も先のことだが、既に私の誕生日会が決定していた。

ワクワクとした思いは日に日に募る。

その気持ちがまるでガラクタのごとく粉々に踏み潰されるとは思ってもみなかった。
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