冷たい君の不器用な仮面

次の日の夜。





私はまた街へと出かけていた。






……今日は特別体が痛い。





いつもの何倍も、身体中が痛む。






私は、ぎゅっと自分の体を腕で抱きしめた。






やっぱり震えてる……





……もうあんな仕事したくないよ……





ブルルルルル……







その時、突然大きなエンジン音が辺りに響き渡った。






私は俯いていた顔を、ゆっくりとあげる。






「おい」





また、低い声が私の耳に響いた。





もう見なくても誰かなんて分かる。






…だって、つい昨日も聞いたばかりだったから。






「何でまたここにいんだよ」






ーーそう。
私の目の前にはバイクに乗ったレイがいた。




レイは鋭い目つきで、ギロリと私をにらむ。





「…聞いてんのか、お前」





私はその声にビクッと体を震わせた。






今のレイの声は、昨日とは比べものにならないくらい低く、威圧感があった。







……相当怒ってる…






レイは何も答えない私にイライラしたのか、大きく舌打ちをした。





「いい加減にしろよ。」





エンジン音をも掻き消してしまうような、よく通る声。





時間が経つにつれ、その声音は圧力がより強くなってくる。





「おい…何でいんのか聞いてんだよ」





「な、んでって…言われても……」






私は不意に泣きそうになってしまった。





……っ何でよ……






私は目を手でゴシゴシとこする。






……何でっ…怖いはずなの…に…






ーーーレイの声を聞いて、安心してる自分がいるんだろう……





私は泣きそうになった顔を隠すために、パッと後ろに体を背ける。





……これ以上ここにいたらダメだ。






このまま話していると、いつか涙が溢れてしまう。






「別に…っ理由ないし」





私は震える声を必死で抑え、なるべく平然と答えた。






でもそのごまかしは、レイには効かなかったようで…





「お前…なんかあったのか」





さっきまでの声とは違って、低くも優しさを帯びた声。





私はその声に、ついに涙がドッと溢れ出してしまった。






「……っな…にもなっ……い！」






私は涙を止めようと、必死に目をこする。






……道路の真ん中で何やってんだろ、私。




こんな公の面前で、泣きじゃくって。





ただ、最近知り合った程度の危なそうなやつに、声をかけられただけなのに。






……それだけなのに、なんで涙が出てくるんだろう。