冷たい君の不器用な仮面
「あっ家ここだから」






私は目の前にある家を指差す。





「……」






レイは何も言わず、もと来た道に向かって歩き出した。





……えっ本当に私を送るためだけにここまで来たの…?





私は正直驚いた。





学校でもさっきの態度でも、あくまで人とは関わりたくないような雰囲気をかもし出しているのに。






ただ純粋に、私一人で夜道を歩くのは危ないという理由で、ここまで送ってくれたレイ。





私はその事実に、胸がキュッと鳴った。





「って、あっちょっと待って!」





私は颯爽と歩き出すレイに、あわてて声をかける。





すると、レイはめんどくさそうにこちらに振り返った。





……お礼!お礼くらい言わなくちゃ!





私はレイのもとに駆け寄り、目を合わせる。





「ここまで送ってくれて、ありがと!」




私はにこっと微笑んだ。





作り笑顔なんかじゃない。






私のためにレイがめんどくさい事をしてくれたのが、ただ純粋に嬉しかったから、溢れた笑みだ。






すると、レイは一瞬目を見開いたかと思うと、またすぐに仏頂面に戻りスタスタと歩いて行ってしまった。





私はそんなレイに、また笑顔がこぼれた。
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