冷たい君の不器用な仮面
……どこに行くんだろう
行き先も言わず、ただ走り出したレイは、あれから一言もしゃべらない。
ただ静かな道路に、バイクを走らせるだけ。
私のためなのか、そのバイクも安全運転にしてくれているようでゆるやかに走っている。
そういう何気ないレイの優しさが、今は心地いい。
ずっとこのまま、どこか遠いところへバイクで連れて行って欲しいとさえ思った。
「…寒くないか」
突然、レイが口を開いた。
私は急な声にびっくりして、「へっ!?」とマヌケな声を出してしまった。
「…えっと、うん。寒くない」
…寒くないかって……ほんとどんだけ優しくしてくれれば気がすむのだろう。
体も心も傷ついている私には、今のレイのぶっきらぼうな優しさが身に染みる。
……ずるいな、ほんと。
昨日まであんなに他人行儀で、私の事邪魔者扱いしてたくせに。
本当は他人と関わることなんて、大嫌いなくせに。
なんでこんな時に、優しくするの……
泣いてるから?
弱ってるから?
……どっちでもいい
今はだれかとなりにいて欲しい。
一人でいたら、私はまた孤独に包まれて苦しくなる。
だからお願い……
「今だけ……今だけでいいから一緒にいて……」
私は小さな声で、そう呟いた。