冷たい君の不器用な仮面
「お邪魔します……」





……レイが連れてきてくれたのは、前にきたあのコンクリートの大きな建物だった。





重たいドアを開けると、やはり暴走族がウジャウジャといた。





相変わらず私にちらっと視線向け、すぐにそらす。






あまり興味がないのだろう。





私だけが変に意識するのも変かな、と思い私はもう暴走族たちを気にしないことにした。





「……!ちょ、待ってよ!」




私はさっさと歩き出すレイに小走りでついて行く。





……レイって歩くの早いな…






ついて行くので精一杯だ。





私は必死でレイについていこうと踏ん張っていると、急にレイがピタリと止まった。





「……入れ」





そう言い、私を顎で促すレイ。





私は言われたとおりに、部屋の中に入った。





「……っ涼那ちゃん!?」





……そこには雑誌を片手に、驚いたような目でこちらを見ているユウがいた。






私もびっくりして、思わずレイに視線を向ける。






「…なんでユウ?」





私がそう言うと、レイは少し戸惑ったような顔をした。





「……??」






その反応に、私はますます混乱する。





……ユウに慰めてもらえってこと?





私はよく分からないまま、ユウが腰掛けているソファーの横にちょこんと座った。






するとユウは、潤んだ瞳を私に向けガバッと抱きついてきた。






「……!?」






私はびっくりして声も出ない。






何事かとユウを改めて見つめると、次は怒ったような表情を浮かべて私をにらんだ。





……何…?この人ほんとに大人?





なんかいろんな意味で子供っぽいんですけど……






「もう涼那ちゃん!なんであの日、何も言わずに帰ったの!?心配したんだからね!」






ユウはぷうっと頰を膨らませる。






…ほんと表情がくるくると変わる人だ。





見ていて面白い。






……ん?一人で帰った?





私はふと引っかかった。






「一人じゃないよ?レイが家まで連いてきてくれたの」





その瞬間、ユウの表情が驚きへと変わる。





大きく目を見開き口をぽかーんと開けていて、せっかくの整った顔が台無しだ。






「……っえ、レイが…送った?女の子を……?」






ユウは相変わらずの間抜けな表情で、レイに視線を移す。





「……んだよ」





レイはちっと舌打ちをした。






「……どうしたんですか?」





あまりにも驚いているユウを不思議に思い、私は首をかしげる。





するとユウはハッとしたように我に返り、頭をかいた。





「……いや、ちょっと……びっくりしただけだよ。ごめん、気にしないで?」






ユウはそう言うと、ニコッといつもの優しい笑顔を浮かべる。





「……?はい…」





私は少し気になったが、追求するのもしつこいなと思い、そこで諦めた。





ふとレイを見ると、ユウを鋭い目つきで睨みつけていた。





……何何、この異様な雰囲気。
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