冷たい君の不器用な仮面
「…お前、これから夜毎日、ここに来い。」






「はっ……?」







レイはカウンターに座り、コーヒーを飲みながら口を開く。








バイクに乗り、連れてこられたのは前に夕食を食べた、あのバーだった。







落ち着いた雰囲気が流れるあのお店。






この温かい静かな雰囲気が、始めて来た時にすごく気に入った場所だ。







私はいきなり妙な提案をし出したレイに、ポカンと口を開ける。







「うんうん。そうしなよ、ね、涼那ちゃん。」







マスターまでもが優しい笑顔を浮かべながら、レイに提案に同意して来た。







「……えっ…いやいや迷惑になるので」






私は思い切り首を横に振った。







だって、このバーは明らかに大人がくるようなバーだ。







レイは大人っぽいからここに入っても違和感はないけど、私はとてもとてもそうとは言えない。






それに、ここは独特に雰囲気が漂っていて、私みたいな人が来ていい場所じゃないってことくらい、理解できる。






すると、一向に首を縦に振らない私にイラっとしたのか、レイは眉間に眉を寄せる。






顔に『不機嫌です』と書いてありそうな勢いの、不機嫌オーラが溢れて出してきていた。







……きっとレイは、私に居場所を作ろうとしてくれてんだろう。









私は決して口を開かないけど、毎日夜に街に出歩いているのには理由があるって事ぐらい、レイはきっと分かってる。







だからレイは、私の居場所を作ってくれようとしてる。







孤独に満たされた私に






温かい場所へと手を差し伸べてくれている。

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