冷たい君の不器用な仮面



「もう目覚ましてからずっとこんな調子なんだよ。本当疲れる…」




ユウがふらっと私の隣のイスに座り、息を吐いた。




「…だから帰るっつってんだろ」




ユウの言葉に、レイはより顔をしかめる。




……このやり取りって、いったい今日何回してるんだろう。
まあ数えきれないんだろうけど。




「さて、そろそろ本題に入りたいんだけどいいかな?」




マスターがゴホンッと咳払いをした。




ユウはその言葉に、首を傾げる。




「本題?レイの見舞い以外に何か…」




「本当はお見舞いだけだったんだけどね。……ついさっき、別の用件が出来たんだ」




マスターの真剣な声に、言い争っていた二人の顔つきが変わった。




「……ここに来る前、涼那ちゃんがまた赤髪の男につかまってた」




「……っ」




瞬間、ユウが息をのんだ。
……驚きで、声が出せないかのように。




「あの日からそんなに経ってないから、俺たちも油断してた。そこをあいつらに突かれたんだ。」



マスターがユウとレイの顔を交互に見ながら、話を続ける。



「……もしあの時、俺があの道を通っていなかったら……涼那ちゃんはきっと連れ去られてただろうね」




マスターの言葉にユウとレイはうつむき、グッとこぶしを握った。




「油断…できないな、これから。一秒たりとも」




ユウがうつむいた顔を上げ、私に視線を向ける。



「ごめんね…涼那ちゃん。また怖い思いさせちゃって。でももう絶対怖い思いさせないから、心配しないで?」




その瞬間、ユウのまっすぐな瞳が、あの時のレイの瞳と重なった。








……やっぱり、兄弟だ。




まっすぐで綺麗な瞳に、心が落ち着くような安心する声。




年が離れていても、こんなに似ている。




私はそんなユウに、ふっと笑みを浮かべた。




なんか今のユウの言葉だけで、大丈夫なような気がしてきた!




私もまっすぐにユウの瞳を見つめ返して、ニッと笑う。




「心配なんか、しようがないよ!」


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