冷たい君の不器用な仮面





カランカラン








木製のドアのベルが、店内に響く。









「いらっしゃい、レイ」








マスターの声と同時に、私はドアに目を向けた。









「レイ!久しぶり」







私は横に座ったレイに、笑顔を向ける。









あの路地裏での事件から今日までの1ヶ月間、何事もなく平和に過ごしていた。











あの事件はこのバーの近くで起こったから、正直レイはここに近づくのは危ないと思う。









でもレイはあの事件から、たった一週間後にこのバーに訪れた。








もちろん横にはユウもいたけど。









その時は、事情を知っていたマスターと私で、早く帰るよう説得したけど、思いの外ユウもレイも頑固で結局帰らず今もここに平然と来ている。








私はそんなレイの度胸が、純粋にすごいと思ったけど、何か対策をした上でここに来ているのかもしれない。









レイもユウも考えなしに動く人ではないと言うことは、十分わかっていた。













「レイ、今日は一人なの?」








私は何気なくレイに声をかける。






するとレイは出されたコーヒーを口にしながら、口を開いた。








「……アイツは仕事で遅くなる」











「そっか!…あ、オムライス食べる?」








「……それ食べかけじゃねェかよ。絶対嫌だ」










「……マスター、この人潔癖症です」















あれから私とレイの距離は、ずいぶんと縮まったと思う。














相変わらず、触れようとすると拒絶されるけど、前よりは話してくれるようになった。







…もともとあまり口数は多くない人だから、話しかけるのはいつも私からだけど。
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