私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
肩を持たれて離される。
「行ってこい」
「…あとで、来てくれますか」
「…そう言ってるだろ」
…どうしてだろう。不安が消えない。
季龍さんに背を押され、病室に近づく。振り返ると、季龍さんは困ったように眉をひそめる。
「季龍さん」
「なんだ」
「…いってきます」
「あぁ、行ってこい」
季龍さんをじっと見つめ、背を向ける。ここでこうしていても仕方ない。とにかく、目的を果たしに行こう。
目の前のドアを見つめ、息を吐く。緊張してきた…。汗ばむ手を無視して、ドアをノックする。
「はい」
聞こえてきた声に息が詰まる。ダメだ、泣きそう…。
息を吐き出し、今度こそドアを引く。個室だから、ベッドは1つしかない。そんなの、当たり前なのに。そのベッドに横になっているその人は1年見ていないだけなのに、記憶にある姿から随分老けて見える。