私のご主人様Ⅴ(SS?投稿しました)
「こと、は…?」
「お父さん」
ゆっくりと身を起こしたお父さんは、呆然と顔を浮かべたまま私を見つめている。なんとか浮かべた笑みだけど、うまく笑えない。
「ッ琴葉!!」
「ッ!?」
布団を跳ねのけたお父さんは、立ちすくんだままの私を抱きしめる。
…お父さんに抱きしめられたのなんて、いつぶりだろう。恐る恐るお父さんの背中に手を回す。
「…痩せたね」
「ッあ、あぁ…。そうだな」
お父さん泣いてる?…あぁ、ダメだ。お父さんが泣いたら、泣けないや…。
熱かった目頭も、喉元まで出かかっていた何かも静けさが戻ってくる。息をつくと、お父さんの肩に額をつけた。
「琴葉、ごめんな。ごめんな」
「ううん、私もごめんなさい」
逃げるタイミングなら、たくさんあった。逃がしてくれるタイミングさえ与えられていた。それでも、お父さんのところに戻らなかったのは私の意思だ。