医者恋シリーズ 俺様ドクターのとろける独占愛
飲み終えた薬のゴミがベッドに落ちているのだとばかり思っていた。
しかし、そこに見たものは枕の下に隠すようにされた未開封の散剤。
それも一回分ではない。数にしたら二日は飲んでない計算になる。
航くんたちより小さい子どもたちには、看護師がその場で薬を飲ませている。
だけど、自分で飲むことができる大きな子たちには、配薬後の内服は任せていたりする。
もちろん、しっかり飲んだかどうか、内服後に確認のために出たゴミをもらいに回るけれど、自分で捨ててしまっただとか、看護師の方がそのひと手間を怠ったりしてしまうこともあったりする。
飲んだと信用している部分もあるからだけれど、今目の前にある光景を見て、それは怠ってはいけないことなのだと痛感していた。
「航くん……。あっ、天笠先生!」
呆然とする私の前を突然、天笠先生の腕が横切る。
隠されていた散剤を片手で一気に掴み取ると、黙ってその場を立ち去っていく。
その穏やかさのない足取りが航くんを見つけて取っ捕まえそうな勢いで、私は慌ててそのあとを追い掛けた。