ダメ。俺のそばにいて。
「星玲奈?」
そんな風に思ってたところで、ふいに聴き慣れた声が私を呼ぶ。
後ろを振り返ると、予想通り。
「茉優…」
「やっぱり、星玲奈だ〜!」
嬉しそうにニカっと微笑む、“最恐の幼なじみ”がいた。
「星玲奈、すぐ帰ってなかったんだね!茉優、今買い出し終わったところ。」
「うん、まだ学校にいたの…、買い出しお疲れ様。」
えへへ、と笑う茉優が、私の隣へ大きな目を向ける。
…このまま、茉優の瞳に久遠くんごと吸い込まれてしまいそう。
なんて、変な考え。
無意識のうちに、ギュッと右肩のスクバの紐を握りしめた。
「えっと、久遠真尋くん。茉優も知ってるよね?隣のクラスの。」
「ああ!噂の転校生さん!?私、星玲奈の幼なじみの相原茉優です。」
「…相原茉優、聞いたことある。」
「ほんと!?え、嬉しいっ!よろしくね?」
人懐っこい笑顔を見せる茉優に、久遠くんがペコリと頭を下げる。
さすがの久遠くんでも、茉優の名前は知ってるんだ……。
私は開口一番に『誰?』だったけど。
いや茉優みたいに噂になるような存在じゃないから、まあそれは仕方ない。