心にきみという青春を描く



「……俺の不注意のせいなのに、俺をかばって葵が死んで……。なのに俺はただ呆然とするだけでなにもできなくて。彼氏なのに……」

「そうだよ。お前はあいつの彼氏だったよ。じゃあ、あいつが今、お前に対して言いたいことはなんだと思う?」

「バカだって言ってると思う」

「………」

「なんで道路に飛び出したのって。誘いを断らなければこんなことにならなかったって。たくさんこの先やりたいことがあったのに、なんでって……」


「ふざけんな」


その瞬間、バコッと鈍い音が河川敷に響いた。


日向くんに勢いよく殴られた先輩は、その場にしゃがみこむ。すぐに駆け寄ろうと思ったけれど、私の反応よりも早いスピードでさらに日向くんは先輩の胸ぐらを掴んだ。


「お前、葵のなにを見てきたんだよ。あいつがお前を責めることを言うと思うか?」


グイッとパーカーを掴まれている先輩は苦しそうだったけれど、私は間には入らなかった。

だって、殴られた先輩より日向くんのほうがずっと苦しそうな顔をしていたから。

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