副社長と恋のような恋を
「そんなこと。ただ、急なことだったんでびっくりしたんです」

 副社長はそうだよね、さっきは怒ってたもんねと言った。その言葉に、平井さんが反応した。

「こっちもびっくりしたよ。朝から結婚式場の見学がしたいなんて」

「ごめん。でも、融通を利かせてくれて助かったよ」

「そっちの仕事を理由にされたら断れないよ」と、平井さんは苦笑いをしながら言った。

 本当に仕事って名目も含まれていたんだと思い、少しほっとした。

 チャペルに着くと、副社長はスマホを取りだして写真を撮り始めた。

「どうしたんですか、写真なんか撮って」

「一応ね。場合によってはウェブサイトに使わせてもらうかもしれないから」

 副社長はいろいろな角度や場所から写真を撮りながら言った。

 チャペルはとてもシンプルな作りだった。木目調のイスがバージンロードと並行してきれいに並んでいる。神父様用の小ぶりの机があり、その後ろにはガラスでできたクロスが飾られていた。本来なら花が飾られるだろうなという場所にはなにもなかった。

 そして天井に目を向けると豪華なステンドグラスが埋め込まれていた。太陽の光が反射してキラキラと輝いている。

 それを眺めていると、平井さんが隣に来た。

「どうですか?」
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