副社長と恋のような恋を
「すごくきれいなチャペルですね」

「ありがとうございます。結婚式を挙げるときは、ぜひ」

「いや、そんな。あの、そうですね」

 私がしどろもどろに答えると、平井さんは笑いを堪えるような表情になった。

「酒井さん、川島に振り回されていないですか? 久しぶりに連絡があったと思ったら、ウェブサイトの背景写真として使うかもしれないから、見学させてほしい。あと、ウェディングドレスの試着もしたいって。まだサイトのデザインが決まっていない段階で言ってくるなんて、困ったやつですよ」

 古くからの友人だから副社長のことがわかっているのだろう。面倒なという感じが言葉の端々に見えるけれど、表情は穏やかなものだった。

「振り回されていますね。ずるい人だなとも思うし、困ったなとも思います。でも、嫌ではないんですよね。ちゃんと話しをしてくれますし、思いやりもある人ですから」

「よかった、あなたみたいな人が川島の近くにいて。やっとゼロ人よりも近い六人を見つけたみたいで」

「えっ?」

 よくわからない内容で、思わず平井さんの顔を見た。

 平井さんは、たいしたことじゃないからと言って、話を続けた。
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