副社長と恋のような恋を
「そうですね。せっかくウェブで読んだ小説を、わざわざ紙媒体で買ってくださるんですから。書き下ろし書きます。たぶん、この話は問題なく通ると思いますよ」

「なら、よかったです。あと、もうひとつ、せっかくなんでちょっとした仕掛けをつけましょう」

 なんだかとても楽しそうな笑みを角田さんは浮かべている。

「どんな仕掛けですか?」

「それはちょっと言えないです。編集長に相談してOKがもらえたら話しますから」

 角田さんの中では、今回の小説はヒットすると確信しているらしい。

 今年、発売された青春小説は、思っていたよりも売れた。単行本にするとき、サイドストーリーとして登場人物の恋愛話を書き下ろしした。恋愛話といっても片思いのままで終わるから、ハッピーエンドもなにもないけれど、誰もが過ごす青春には、そんな恋も存在する。それが共感を呼び、SNSで話題になった。

 小さいながらも話題になった作家が、初の恋愛小説を書いたのだから売れないはずはない、と鼻息荒く説明された。

 だから、この小説にかける角田さんの熱意は半端ない。

「そうだ、短編の書き下ろしだけは、腕時計ではなくて置時計や壁掛けの時計にしてみたらどうですか? 書き下ろしは発売される腕時計のためではなく、都築先生が書きたいものを書いてみてください」
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