副社長と恋のような恋を
「今日、お昼ご飯を食べる時間がないくらいだから、すごく忙しかったんですね」

「うん。ark(アーク)のウェブ用に使う写真を撮りに、平井のところに行ったんだ、小野さんやカメラマンと一緒に。そしたら、小野さんが泣き出した」

「え、なんで小野さんが?」

「結婚まで考えていた彼女に振られたらしい。それでウェディングドレスを見たら号泣。彼女に着てもらいたかったって」

 その話を聞いて、その状況を想像したら悲惨な情景しか浮かばなかった。

「式場のほうの予定を優先したら、本来の予定より五日早まって、モデルの用意が間に合わなかったんだ。だから秘書課から女性をひとり連れって行って、男性のほうは小野さんがやることになったんだ。顔が映らないようなアングルで撮る予定だから、問題ないだろうって。そしたら、小野さん号泣。小野さんが落ち着くのを待ってる時間もないから、俺が代わりにモデルをやったんだ」

 副社長は苦笑いをしながら言った。

 その話に、胸がずきっとした。でも、なんでもないように、笑いながら、私は答えた。

「大変でしたね。今日の写真、データもらってないの?」

「一応、数枚、確認のためにもらったよ」

 ジャケットのポケットからだしたスマホを操作し、画面を私に向けてくれた。
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