副社長と恋のような恋を
　私はそこから離れ、ちょうど来たエレベータに乗り込んだ。泣きそうになるのを必死で抑えた。

　その日、副社長から来た連絡をすべて無視した。頭の中がごちゃごちゃしていて、今は副社長と話す気になれなかった。

　次の日、会社に行くと副社長の秘書の人に呼び止められた。

「あの酒井さん、これを」

　それは四つ折りにされた小さなメモだった。

「失礼します」と言って、秘書の人は軽く会釈をして去っていった。

　私はその場でメモを開いた。そこには“昼休み、会議室へ”とだけ書かれている。そのメモを手帳に挟み、ため息をついた。

　昨日、連絡を無視したのが原因だということはわかっている。今までそんなことは一度もしたことがなかった。心配してくれているのだうか。それも心配しているふりをしているのだろうか。そんな考えが浮かぶようになってしまった。行きたくはないけど、行かないわけにはいかない。重い足取りで、自分のデスクへと向かった。

　嫌なことがあるときは、時間は早く進む。あっという間にお昼になってしまい、重たい気持ちを抱えながら会議室へ向かった。

　いつもはａｒｋ新作企画チームの面々がいる会議室。ドアを開けると、そこには副社長しかいなかった。
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