副社長と恋のような恋を
「ちょっとごめん」と言って、副社長はカバンから、赤いラッピングに包まれたものを出した。

「これ、本当は麻衣の誕生日にプレゼントしようと思ってたものなんだ。季節外れのプレゼントになっちゃったけど」

 差し出されたプレゼントを受け取った。ラッピングを解くと、中からはラベンダー色のマフラーが出てきた。マフラーは広がらないように、白いリボンで結ばれていた。その結び目に、なにか光るものがあった。それはどう見ても指輪だった。

「これ」

「うん、今すぐに結婚はしたくないだろうっていうのはわかっているから。ただ、あの日プロポーズをする予定だったんだ」

 あの日、副社長が私の格好を見て困った顔をしたのは、そういうことだったのか。

「俺たちは都築麻衣とクロノスの副社長として出会って別れた。今度は酒井麻衣と川島明人として出会いたいんだ。今ここで」

「私もそうしたい」

 私は副社長に会うと決めたとき、酒井麻衣の姿で会おうと決めていた。そして副社長ではなく、ただの川島明人と話がしたいと思っていた。
< 191 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop