副社長と恋のような恋を
「私もそのはアイディアいいと思います。arkでオープンハートはなかったですし、動きのあるデザインですから動画で期間限定のプロモーションビデオをサイトに上げるという方法もあります」

 森本さんは広報が過去に作ったプロモーションビデオをタブレット端末で副社長に見せた。

 それは十代向けに販売された時計で、秒針の先に小さな三日月がついているものだ。その時計の文字盤の十二時の部分はクロネコになっている。その秒針が十二時を指すと、まるで猫が月に乗っているようになる。

「この動画がSNS上でかわいいと話題になり、時計はすぐに完売になりました。動きがあるもの、変化があるものは売れ行きもいいと思います」

 副社長は少し厳しい顔で、そうですねと答えた。

 村田先輩はスケッチブックを開き、すごい勢いでなにかを描き始めた。

「あの、こういう感じはどうですか?」

 スケッチブックをみんなに見えるように村田先輩は持ち上げた。そこには、文字盤のラフ画が描かれていた。

 七時と八時の間にオープンハートがある。それを基準にして楕円や円を描く線が重なりあう。幾重にも重なった線の上にワインレッドの線が一本、オープンハートを貫くように伸びている。その線の上にダイヤが二つ、はめ込まれていた。
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