絶対に守るから。
なのに俺たちは立ち去らなかった。心のどこかではもしかしたら思い出しているのかもしれない、無意識の所で覚えていてくれているかもしれない。ありもしない淡い期待を抱いて、淡い可能性に賭けていたから逃げる事をしなかったのかもしれない。でも、実際はどうだ。思い出そうとする意思さえ見えない彼に剣を向けられ、答えようによっては殺されそうになっている。

「いや、彼の弟の知り合いだ」

俺も武器を取るべきか正直迷った。けれど、もう誰も殺したくはないという彼女の思いから人を殺せるような立派な武器は持っていない。脅しに使える弾の入っていない拳銃、人を刺し殺せない短剣。今、一番使えるのは己の格闘技くらいだ。護身用でしか使った事がないくらいの浅いもの。同等の立場であれば苦もなく勝てる相手だが、ハウラムも場数を積んで技術を上げているはず。ウィルにお嬢さんを任せるとしても、今の状況では同等に戦えれば上々かもしれないな。
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