きらり、きらり、
「ミナツさんが一生懸命作ってくれたことはわかります。その気持ちだけでうれしいんですけどね。それに、ほら、」

小川さんはピックに刺さったミニトマトとアスパラのベーコン巻きを差し出してきた。

「笑って食べた方が絶対おいしいです」

小川さんが本当に楽しそうに笑うから、もやもやした卑屈な気持ちがすうっと消えた。

「そうですね」

ベーコンの香ばしさとミニトマトの甘味と酸味。
じゅわっと広がるそれらと一緒に、楽しい気持ちも広がっていく。

「……え?」

笑顔で幸せを噛み締める私の顔を、小川さんは驚いた顔で見ている。
不思議に思いながら飲み下して、口の周りに変なものでもついたかと、ウェットティッシュで拭きながら、ようやく思い至った。

「あれ? 私……」

小川さんの手には、ピックとアスパラのベーコン巻きが残っている。
小川さんが手渡すつもりで差し出したものを、私はそのまま食べてしまった……らしい。
飲み込んだはずのトマトからじわじわと恥ずかしさが全身に広がり、口を手で覆っても耳の赤さまでは隠れない。

「すみません! 間違えました!」

ピックを持ったまま、小川さんも所在なげに視線をさ迷わせた。

「いや、不味くなってなきゃいいんですけど」

今度こそピックを受け取って、一気に口に放り込んだ。
もうどんな味か感じる余裕もない。

「とってもおいしいです!」

小川さんは吹き出すように笑った。

「やっぱりおいしいんじゃないですか!」

「あ、また間違えました! 普通です!」

「あははははは!」

< 75 / 105 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop