Deal×Love
「父を説得しに行きましょう。ついてきて」

私は桜に強気に言って、玄関のロックを解除する。

家を出たあの日、もうこの家には帰りたくないと思って家を出た。

あの日は自分のことでいっぱいいっぱいだった。

父がどんな人間か、私が一番分かっていたはずなのに。

あの時、桜も一緒に連れ出すべきだった。


「お帰りなさいませ、椿様」

玄関を開けるとすぐにメイドが頭を下げて私を出迎えた。

メイドに、大理石の床に、壁に飾られている絵画に、高そうな花瓶。

視界に入り込む高級な暮らしを象徴した品々に、頭に昇る血は止まらない。

「ただいま。父は何処に?」

私は出迎えたメイドに訊ねる。

「広間に居られます」

「桜、行きましょう」

居場所を聞くと私は歩き出す。
< 379 / 424 >

この作品をシェア

pagetop