あけぞらのつき


***

カタカタと音を立てて、古い映写機が回り始めた。

白い樹精はその音で、主人が戻ったことを知った。


それは鏡偲か長夜叉か。


どちらにしろ、もうここにはいられない。

樹精は禁域の水鏡に、その身を沈めた。


深く深く、眠りに就くために。
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