お見合いから始まる恋→結婚
私は玄関のドアを開けるなり、愛しい人の名を呼んだ。

「えっ?すいません、間違えました。」

私はドアの向こうの人に反射的に謝った。

そこには私の知らない男性が立っていた。

「いえいえ、あなたが平川陶子さんですよね?」

その男性はそう聞いたが、私には覚えのない顔だった。

「初めまして。原の上司の中村です。一度スマホでお話だけさせてもらった事があります。」

「あっ。」

私は思わず声を出してしまった。

「こないだは電話で失礼しました。私が平川陶子です。」

ここでは尚登の婚約者とはさすがに名乗れなかった。

「実は原の準備がすごく時間がかかっていまして。このままじゃ今日中に引っ越しが出来なくなるかもしれないと、あいつに内緒でこっそりこちらに先に来させてもらいました。」

そして私を安心させるかのように中村さんは微笑んだ。

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