大江戸ロミオ&ジュリエット

多聞は泣きじゃくるおせい(・・・)から、なんとか状況を訊きだした。

八丁堀の松波家の組屋敷から確かに二つの駕籠(かご)で出かけたはずなのに、青山緑町の玄丞先生の家に行くまでのどこかで、志鶴の乗った駕籠が忽然と消えたと云う。

すぐさま多聞は、町家では目立つ藍墨茶(あいずみちゃ)肩衣(かたぎぬ)を剥ぎ取りながら、部下の同心とその手下たちへ、やるべきことを次々と指図した。

我が身は、銀鼠(ぎんねず)色の着流しに縞の平袴(ひらばかま)という「ちょいと粋な風情(ふぜい)の武家の男」の姿になると、手元に置いていた刀を左手で引っ掴んだ。

そして、岡っ引きの一人を引き連れて、番所の油障子をぱーんと開けたと思ったら。

一目散に外へと飛び出して行った。

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